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そういう断片をHDDの片隅に発見したので、お茶を濁すためにのっけてみます。
最初に断っておきますと、あまりにも断片すぎて本当エンターテインメント性の欠片もありません。
それでも良ければどうぞ。




その日アフロディーテが闘技場の脇を通って行こうとしたのは、全くの偶然だった。
黄金聖闘士になることが既に約束されている彼にとって、他の修行生との手合わせなど退屈で話にならない。年上のサガかアイオロスに稽古をつけてもらうのでなければ、自分以外の黄金候補生ぐらいしか相手にならないのだ。その候補生も今は山羊座を得る予定のシュラと、蟹座候補のデスマスクしかいない。アイオロスの弟アイオリアももうすぐ候補生になると聞いているが、少なくともアフロディーテにとっては、今はまだそこら辺のちびっ子と大差なかった。
闘技場に設置されている水飲み場は小さい上に衛生的に見てあまり宜しくない。周囲に言われるほどには自分の見た目に頓着しないアフロディーテではあったが、今しがた見も知らぬ他人が口をつけた水道から水を飲むのは我慢がならなかった。かといって自宮まで何も飲まずに戻るには喉は渇きすぎていた。
裏手に出れば小さな湧き水があったのを思い出し、ひらりと身を翻して木立の中へと走りこむ。時刻は午後二時を回ったあたりで、一日の中で一番暑い時間帯だと言えた。故郷ではついぞ見なかった照りつける太陽にも、真っ青な空にも、随分慣れた。そうは言ってもやはり、木陰のささやかな涼しさは有り難い。つまらない手合わせにささくれだった気持ちがすっと凪いでいく。

手を差し入れた水は、この陽光のもとでよくもと思える程に冷たく心地が良かった。二度三度と掬った水を口に運ぶ。ついでに埃にまみれてしまった顔を洗って、持っていたタオルで拭うとさっぱりした。他に誰もいないのも良い。今度から手合わせの後は必ず寄ろうと考えてくるりと元来た方向に向き直ったその時、柄にも無くアフロディーテは仰天して危うく大声をあげるところだった。
目の前に自分より小さな子どもが、ちょこんと立っているのだ。
身長はアフロディーテの肩に届くか届かないかというところで、おそらくはいくつか年下なのだろう。仮にも黄金聖闘士候補の自分に全く気配を悟らせずにそこに現われたのも驚きだが、不思議なのはその姿だ。肩口で無造作に切られた髪は多分銀髪と呼んでいいのだろうが、そこに紫色の光を強く帯びている。零れ落ちはしないかと心配になるほどの瞳の大きさが、顔の小ささに対してアンバランスな程だった。数少ないアジア系の修行生が着ている道着に似たものを纏っているが、アフロディーテがかつて見たことのあるものよりも数段質の良い衣服であるようだ。人種を特定できない白い肌と比較的彫りの浅い顔立ちに、額に施された紅い眉化粧が妙に良く似合っていた。
少年か少女かの判別もつかないその不思議な生きものは、驚いたような顔でアフロディーテを見つめている。
「君は…誰?どこから来たの?」
ここは年長の自分が何とか進展させなくてはならないと考え、怯えさせないようにと気を遣いながら話し掛けてみる。しかし子どもは困ったような顔で首を傾げるばかりで、口を開こうとはしない。どうやら言葉が通じていないらしかった。
「私は、アフロディーテ。君の名前は?」
ギリシア人ではないようだし、無理もない。自分を指差してゆっくりアフロディーテ、と発音し、次いで子どもを指差して軽く笑いかける。それで大体意図したところは通じたようで、子どももにっこり笑って喋った。
「ムウ」
それがその子どもの名前らしかった。

 

お粗末。恥ずかしげもなく外見について描写していたりするあたりが、星矢はまりたての頃に書いたんだなーという感じがしますなぁ。

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