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わ、なんか間が開いた。
ええと、なんかもうあまりにもアレなので書いてる間も「・・・これ本当に載せてもいいんだろーか」とか何度も思ったのですが(その割には書いてる間はノリノリ)、折角なので載せときます。
元ネタはタイトルそのまんま、矢野絢子です。つか、何のひねりもないです。
注意!
先に書いてしまうと、シオンムウではありますがはっきり言ってシオンムウ好きの方には向いていないかも知れません・・・。
とにかく題材が趣味悪いので(冗談ぬきで)、タイトル見て少しでもウッときた方は速攻引き返して下さい。
できるだけオブラートに包んではみましたが、包みきれておりませんので。
読後の苦情についてはお受けできかねますので、閲覧は自己責任でお願いします。
死刑執行人
彼の仕事は、死刑執行人でした。名前はシオンといいます。
仕事なので、毎日人をころします。
毒にんじんをすったり、電気椅子のスイッチを押したり、天井から縄を吊るしておいたり。
世の中、悪いことをして死刑になる人はそんなに多くはありません。多くはありませんが、一日にひとりくらいはいます。
ですから毎日シオンは知らない人をころします。悪い人に知り合いはいませんでしたので、知らない人ばかりです。
さて、悪い人が死刑になるのは、悪い人を死刑にする法律があるからです。
でも死刑執行人が恋をしてはいけないという法律は、ありません。
一概にその所為だけとは言えませんが、ともかくシオンも恋をしたのです。
好きだと言うと何故か泣きそうに顔を歪めて、でも少し顔をあかくしてこっくり頷くのがかわいくて、シオンはムウを強く抱きしめました。
ぎゅっと捕まえていると、心臓がどくどくいって、胸の骨の向こう側でたくさんの血が流れているのがわかります。
首元にかかる温かい息があんまりやわらかくて、シオンはため息をついたほどです。
止まっていない心臓や、固くなっていない体やなんかには、慣れていなかったからかも知れません。
泣きそうな顔のまま背中にしがみつくムウは、ふたりの隙間がなくなるようにぴったり身体を寄せました。
一緒にいるうちにふたりは、お互いのことをたくさん知るようになりました。
朝ごはんの時間、好きな色、読みかけの本の題名、寝る前のお祈りの長さ。違うことも同じこともたくさんあります。
同じなら嬉しくなって、違うならお揃いにしていくのが楽しみでどきどきします。
けれどなにか、どうしてもなくならないなにかの違いがあるのでした。
同じように生きていて、同じように温かくて、同じようにお互いが大好きなのに、けれど何かが違っているのです。
何が違っているのかはわかりません。それは好きな食べものの違いや歩く速さの違いとは、全く別の違いのようなのでした。
違っているのだと思うたびに、無性にかなしくなります。それでもシオンはしあわせでしたし、ムウも同じようにしあわせだと言いました。
とてもとてもとてもかなしい気持ちで、けれど本心からふたりはしあわせでした。
一緒にいてもかなしいのならどうして一緒にいるのだろう、と考えることもありました。
けれどそう思って少しだけ離れてみれば、体中の血が冷えたように自分がどんどんつめたく強張っていくのが分かるのです。
そうしたらもう一秒も離れていられない気持ちになって、急いでスイッチを押して駆け戻るのでした。
シオンは死刑執行人です。
仕事なので、毎日人をころします。
悪いことをした知らない人たちを、毎日ころします。
悪いことをした知らない人たちなので、何とも思いません。
美味しいものを食べれば嬉しいし、好きな人といればしあわせです。
ただ、泣きそうな顔をした温かいムウの身体をしっかり抱きしめているその時だけ、とてもとても、かなしいのです。